仮想通貨はプラスサムゲームである

仮想通貨界隈がなにやら盛り上がっていますね。
私もつい最近、今年に入ってからになりますが、利益の一部を投資しています(一部じゃなくて全額すればよかった…)。
仮想通貨とは何か、とか、どの通貨がお勧めか、みたいなことは、他サイトを見ればいくらでも書いてありますので割愛しまして、今回は、意外と知られていない仮想通貨の税制に絞ってご紹介します。

「仮想通貨」の税制

2017年現在、仮想通貨は税法上の定義がされていないため、単に「モノ」扱いとなります。
よって、金銀プラチナなどを売買した時と同じ、、『総合譲渡所得』という区分にて申告することになります。
株や不動産の譲渡であれば『申告分離課税』ですから、金額に関わらず税率が一意に決められていますが、『総合譲渡』になると、所得が上がれば上がるほど税率が上がってしまう(所得税、住民税合わせて最高55%)ため、一般的には仮想通貨界隈では「不利な制度である」というニュアンス、どちらかというとデメリットとして語られることが多いです。
ですが、むしろ私は、投資でありながら、『総合譲渡』区分で申告できることは、メリットも大きいのでは、と思っています。

『総合譲渡』のメリット

ここからは、具体的に総合譲渡のメリットを3つほど挙げてみます。

1 利益に対して「50万円の控除枠」がある
人によっては、たった50万か、と思うかもしれません。
確かに、例えば事業所得や不動産所得などにも、「青色申告」をすることで、総合譲渡を超える最高65万円の控除枠があります。
ですが、この青色申告のルールが結構難しいんです。
正規の簿記の原則に従って、(原則)複式簿記で記帳を行い、貸借対照表や損益計算書を作るのですが、正直一般人には言葉の意味すらわかりませんよね。
ですから、基本的には、青色申告を行うために税理士を雇ったり、専用のソフトを使うことになる、つまり控除枠を得るためにお金をかける必要があります。
仮に自分で全部やればこの分のお金は掛かりませんが、その代わり労力が掛かります。

さて、そんな努力の末、65万の控除枠を勝ち取る事業所得と比べて、
総合譲渡では、50万円の控除枠が「無条件で」使えます。
この待遇の差は大きいです。個人的には理不尽とすら思います。

2 5年以上保有してから売ると所得が減らせる
総合譲渡には「短期(5年未満保有)」「長期(5年以上保有)」という区分があり、長期譲渡所得であれば、利益部分を「二分の一」にして申告ができます。
半分ということは、単純に考えれば、総合譲渡のデメリットである最高税率55%が、27.5%まで下がることになります。
実際には、所得が下がることで、適用税率も下がる(可能性が高い)ので、さらに恩恵が得られる計算になります。
長期保有前提であれば、たとえ数千万単位で利益がでても、株式譲渡所得とそう変わらないところまで税率を下げることができるわけです。

3 「他の所得との損益通算」が可能
1,2は利益が出た場合のメリットですが、残念ながら損失が出てしまった場合のメリットもあります。それが損益通算です。

株式譲渡所得にも損益通算はあるよね、と思われるかもしれません。
ですが、株の場合あくまでも「3年前まででの損失との相殺」ができるだけです。しかも同じ株式譲渡所得内に限られています。つまり、株式で損失が出たからといって、他の所得、例えば給与の額などと相殺することはできません。よって、次の年以降株式で利益が出なければ、相殺できずに消えてしまいます。
不動産所得の場合はここから一歩進んで、他の所得との損益通算が可能な場合がありますが、一定の条件(長期保有であるか、自宅であるか等)を満たす必要があります。

では、総合譲渡の場合はというと、「通常生活に必要でない動産」でなければ、「他の所得との損益通算」ができます。ここでいう通常生活に必要でない動産については、限定列挙の形で税法に記載がありまして、金地金やゴルフ会員権は明確に対象なのでダメなんですが、定義のない「仮想通貨」は、少なくとも現状においては、損益通算の対象と考えられます。(将来的に定義付けされた場合はこの限りではありません)

仮想通貨投資が「プラスサムゲーム」である理由

ここまでの説明で、仮想通貨が属する「総合譲渡」という申告区分が、いかに恵まれているか、ということはある程度伝わったかと思います。
ですが、表題の「プラスサムゲーム」までは言い過ぎでは…と思われる向きがあるかもしれません。
なので、具体的な数字をもって、これを検証したいと思います。

例:給与所得5,380,000円、控除は基礎控除380,000円のみ、所得税+住民税1,075,500円の人が、長期譲渡所得となる仮想通貨の利益(損失)を申告する場合

利益額 総合譲渡所得 所得総額 所得税+住民税  税金増加分
 +50万円  0  5,000,000  1,075,500  0
 +300万円  1,250,000  6,250,000  1,452,500  377,000
 +500万円  2,250,000  7,250,000  1,761,500  686,000

損失額 総合譲渡所得 所得総額 所得税+住民税 税金減少分
-50万円 -500,000 4,500,000 927,500 150,000
-300万円 -3,000,000 2,000,000 307,500 768,000
-500万円 -5,000,000 0 0 1,075,500

この表を見ると、どの区分においても、利益が出たときに払う税金より、損失が出たときに戻ってくる税金のほうが高くなっています
つまり、譲渡時にかかる(戻る)税金を考慮すれば、仮想通貨は完全なるプラスサムゲームである、と言えますね。

それにしても、利益が50万の場合は、同じ額の控除枠があるおかげで税金が増えず、損失はそのまま相殺されるので、税金が安くなる分得になるよね、というのは感覚的に分かる気がしますが、利益が数百万単位で出ていても、戻る税金の方が多いのには驚きました。それだけ、長期譲渡所得の場合(二分の一)が強烈に効くってことですね。

最後に

いくら税金が戻ってくるからといって、損をしたら元も子もありません(売買手数料も高いです)。
仮想通貨のご利用は計画的に。

当記事における税金計算等は、2017年5月現在の税制に基づきます。特に仮想通貨においては税制が変わる可能性が高いため、最新の情報を参照されることをお勧めします。

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