全ての優待民がシーマに感謝すべき理由

株主優待は「雑所得として課税」される

日本における上場会社のおよそ三分の一が導入している株主優待制度。
特に優待を狙った投資でなくとも、いつのまにか商品券やらが届くんだよね、という方もいるでしょう。
「月曜から夜更かし」等のテレビで、優待生活を行う桐谷さんが有名になったこともあり、優待投資派ブログは活況を呈しています。

さて、そんな株主優待ですが、税法上は、「雑所得」である、と明確に規定されており、確定申告にて計算が必要になります。
たまに、自分はサラリーマンで20万円超えてないから確定申告免除です、などという人がいますが、こういう(税金に関して)意識高い系の人は、医療費控除やらふるさと納税やらで別途申告しているケースが多いです。
そしてこの場合、雑所得がいくら少額だろうが免除にはなりません。
20万円~の規定は確定申告を「しない」、年末調整で完結する場合のみですから、注意が必要です。

「建前」と「実態」 

とまあ、ここまでの説明は誰もが分かっている「建前」でして、「実態」としては、それでも申告しない人がほとんどです。
でも、今のところ、課税庁が積極的に取り締まっている、という話も聞きません。
私が思うに、現状、株主優待に対する課税が宙ぶらりんになってしまっている理由は3つあります。

1.優待の受領状況の捕捉が難しい

通常、配当所得を申告するために「年間取引報告書」の提出が義務付けられており(もしくは配当金受領書など)、これらの書類には配当金の個別受領状況が全て記載されています。つまり、どの株に対する優待権利を持っているかという情報は、確実に税務署は持っているはずです。
ところが、優待権利を得たという事実から、実際にどんな優待を取得したか(あるいはどんな経済的利益を得たか)、というところが、実はつながっていないんですね。

まず、優待でもらえる商品を複数の中から選択するケースがあります。
当然、どれを受け取ったかによって、同じ権利を取得した人の中でも金額に差が出ますね。
長期保有株主の優遇条件がついていたりすれば、さらに差が出ます。

次に、優待の権利は取得したけど、優待商品は別の人が受け取っているケースもあります。
最近の優待は、ご丁寧にも、優待を取得した人と送り先が異なる場合は記載してください、という欄があったりします。やり方によっては、カタログギフトの優待なんかは、お中元みたいな使い方もできます。
この場合でも厳密には優待を受け取る権利を持った上で、それを譲渡しただけなので、一応課税の用件は満たしています。ですが、受け取っていない以上、課税できるのか? また実際に受け取った人にも課税すべきでは? という問題が残ります。

最後に、優待の権利は取得したけど、行使しなかった(忘れてた)、というケースです。
優待の選択ハガキを送り返さなかった場合の対応はそれぞれ異なりますが、「ハガキを返さなければこれを選択したとみなします」という会社と、「ハガキを返さなければ何も送りません」という会社があります。後者の場合は、何も届いてないのに、課税するのか? となりますよね。

結局のところ、どういう優待を受け取って、結果どの程度の経済的利益を得たかというのは、どうしても「納税者側の自己申告」にならざるを得ません。税務署側からのみで調べられる範囲に限界があります。

2.「優待所得の計算方法が難しい」

対象の優待が、カタログギフトなどの「選べる商品」系や、お店で使えるポイントや1000円割引券などの「自社利用」系であれば、書かれている額面やら実際に受け取ったモノの価値(から少し割り引いた形)で所得としての算定はいちおう可能でしょう。
さらにそれらを、ヤフオクやメルカリで売って現金に換えるのであれば、その価格をもって「時価」や「再調達価格」としてばっちり計算できます。オークション系の所得は税務署は全て把握しているので、申告は必須です。
判断が難しいのが、「10%割引」のような、金額の定めのない割引券です。
原則論に戻りますが、株主優待は雑所得です。そして優待券を受け取った時点で所得は発生しており、それを使ったかどうかは本来関係ありません

ここで表題のシーマ(旧社名、現社名はNEW ART)が登場します。
シーマの株主優待には種類がありますが、自社商品ジュエリー20%割引です。
この券を使って、実際にシーマのジュエリーを買ったなら、相当な額の経済的利益があります。仮に50万のジュエリーを買ったならば10万円得しますよね、じゃ10万円所得に乗せてくださいね…
と言われたら、あなたなら納得できますか? できませんよね?
おかしいですよ! だってシーマは最小単元なら2,800円で買えるんですよ! 優待はヤフオクで100円で売ってるんですよ!! なんて言い返したくなるはずです。

実際、税務署側としても、税法上(基本通達上)、優待の計算方法が明確にされてない以上、上記のような主張は難しいと思われます。
逆な見方をすれば、明確な優待の計算方法が規定されていないのは、このシーマのような
割引券を使った場合の経済的利益と、実際にオークション等で売られている割引券の価格に大きな開きがある
ものの取り扱いが難しいからだとも推察できます。

要するに、シーマのような優待があるおかげで、優待所得に対する課税の(実質的な)ラインが

「優待券を得た時点で課税」ではなく、
「優待券を使用し、実際に利益を得た時点で課税」というところにまで
下がっている、とも言えるんですね。
そういう意味で、我々はシーマに感謝しなければなりません。感謝してもしきれません。

3.税務調査に掛かる手間に対して実入りが少ない

さていろいろ屁理屈をこねてきましたけども、株主優待に対する課税がふわふわしてしまっている理由は、おそらくこれが一番大きいと思います。
1のようにどんな優待を受け取ったかを全部逐一把握した上で、2のようにヤフオクで売ったらいくら、アクセスチケットで売ったらいくらだ、とか一所懸命計算したところで、
よっぽどの大富豪でもない限り、増える所得の合計額はせいぜい数十万、税額にすれば数万にすぎません
それなら、他にやることいくらでもありそうですよね。

あと、いつのまにかシーマじゃなくなってたんですね。。(これが一番びっくりした)

上記記事における優待所得に関する記述は、ミノルタ個人の見解(感想)です。内容を間に受けて、修正申告になったりしても、一切責任は持てませんのでご留意ください。

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